花園

 すごく複雑にいろんなことが絡み合った話で、でもとても丁寧に作られた話だなと思った。一度大枠を把握してから見ると、役者がなぜそこでそういった反応をするのか、なぜその歌詞なのか、パズルのピースがはまっていくようなそんな感覚で少しずつ分かっていく。至る所に伏線というかヒントが隠されていたのだなと2度目3度目で気づいた。特に女郎花のセリフには重要な意味が含まれている箇所が多かった気がする。彼女のセリフから気づいたことがたくさんあった。

 この作品のカギとなるものの一つが「匂い」だと思った。あとは「名前」。その二つがないまっさらな状態なのが「私」。名前がないから匂いがないともいえるのかも。女郎花が「私」から匂いがしない、おかしいと言ったとき、竜胆が園に入りたてだからだろうとはぐらかしていたのをみると、花園の中で八条院から名前を与えられたものは匂いが生まれ、そしていずれ香木とされるのではないかなと思った。だから、「私」は匂いがしない。八条院の妖で作られた女郎花はきっと花園の外の世界を知らないから、匂いのない人を知らない。それで、「私」を変だと思ったのだろうな。

 「まどろみの海」あたりのシーンで、八条院に名前を聞かれた「私」が、椿だと名乗ったのは彼女の名前が椿だったからで、だから椿の花のように匂いもしないのかと思っていたけど、そうじゃなくて匂いのない存在として考えたときに、椿という花があてがわれただけなのかなと思った。それと同じシーンで八条院が侵入者についてみんなに尋ねるけど、誰も答えられないのは誰も「私」の名前を知らなかったからなんだろうな。きっとあの時点で竜胆が名前を知ってたら、操られた状態だったら答えていたと思う。けど、知らなかったから答えたくても答えられなかった。唯一「私」のことをちゃんと知ってる廉は水を飲んだ影響でその場にいなかったから、答えずにすんだ。そこで侵入者が判明しないから、ストーリーがラストに向かって滞りなく続くし、ほんとに上手く作られてるなぁと思った。

 あと、「二つの匂い」で すべては赤裸々 何も隠せない と歌っていたのは、はじめは何が赤裸々なのか?と思っていたけど、「匂い」ですべて分かってしまう、富小路が偽物で花人形だってことも分かるのだってことだったと気づいたときすごく作りこまれているなと、理解するためのヒントはそこら中にあったのだと感心した。花園はほんとにこういうことがいっぱいあって、観ながらそういうことだったのか!と答え合わせしていく感覚でめちゃくちゃ面白かった、、、。全力で台本読ませてほしい。まだまだ気づけていない、いろんなことが隠されてそう。

 大体がセリフや歌詞の中に答えがあった感じだけど、「私」に関することだけは謎というか不思議な存在で解釈の仕方がたくさんあるなと思った。感想見ていてもひとそれぞれの考え方、といった感じ。私的には、「私」は竜胆を変えるため、支えるための存在だったのかなと思っている。見終わった直後は、「竜胆と私」のキスシーンいる?なぜにキスした?って感じたけど、ここまで細部まで考えられている脚本で不必要なシーンなんてないはずだと考え直した結果、重要なのは2人が思いを確かめ合ってキスしたとかじゃなくて、“匂いを移す”ってことだったのかなと思った。女郎花が多聞から無理やりキスされたとき、 匂いを移したな? って言っていたから、この作品の中でのキスにはそういった意味が含まれているんじゃないかなって。そう考えたら、匂いを持たない「私」に竜胆の匂いを移すことで、竜胆の抱えているものを半分受け持つというか、竜胆の悲しみとか葛藤を受け取ってあげるという意味があったのかなと思った。そうやって「私」に受け入れてもらった竜胆はそのあと、堂々と母として慕ってきた八条院に歯向かえるのかなと感じた。それまで八条院に 私に背を向けるのかい とか 疑うのか? とかって問われたときずっと否定し続けていた竜胆が、ラストできっぱりと肯定していた。竜胆が変わっていくための、途中で崩壊してしまわないように支えるための存在として、名前も匂いもない、言えばなににでもなれる存在としての「私」が必要だったのかなと思った。どんなあなたでも傍にいたい と「私」は自ら進んで竜胆の支えになることを決め、竜胆もそれを受け入れ「私」に受け入れてもらうことであのラストに向かうのかなと、そう考えるとあのシーンは必要だったのだって思えるし、そこに「私」の名前がない理由があったのかなと考えられる。

 なににも染まっていない少女が、異界の地で青年?(竜胆っていくつの設定だ?)とともに成長する話だったのかなと思いました。少なくとも、花園に迷い込んだ少女と青年の恋のお話だとは私は思えなかった!(笑)なんでストーリーに 恋に落ちる って書いたんだろ?見るまで恋愛中心のお話なのかと思ってたよ、、、。キスシーンもあるって聞いてたし。私が恋のお話だと思いたくないがために、解釈を作り出しちゃったのかな?そうじゃないといいな、、、。

 

 総じて楽しかった、面白かったって感じだけど、ストーリー的には後半しんどいし、琢矢君の表情一つ一つが苦しすぎて苦しかった。最後まで泣いてはないけどむしろ泣けたほうが楽だったのでは?というレベルで、胸が締め付けられすぎて苦しかった。特に、八条院の根を断ち切ったあとに、八条院のことを見る竜胆の顔が辛そうで泣き出しそうでこっちまで泣きそうだった。でもそこが一番好き。冷淡だって表現されてきた竜胆が思いっきり感情をあらわにしているのがそのシーンっていうのがずる過ぎた。今回本当に琢矢君すごいなという気持ちしか生まれなかった。どんどんどんどんステップアップしていくね。今後が楽しみで仕方ない。あらためて溝口琢矢のかっこよさを感じさせられました、再認識いたしました。

 19日のカテコで 何言うんだっけ って言葉を詰まらせているのをみて、全身全霊全力でやっていたのだなってすごいなぁ、お疲れ様ですって思った。ゆっくり休んでください。

 

 始まる前、キャスト一人一人に握手して肩たたきにいってた姿とか、カテコでセンターに立っている姿とかを見て、あぁ座長(´;ω;`)ってなった。本当に座長お疲れ様でした!楽しい時間をありがとう!!